「今、月々の返済額は変わっていないから安心」——しかし現実には、見えないところで確実に負担は膨らみ始めています。
変動金利ローンには「5年ルール」があります。
基準金利がどれだけ上がっても、5年間は月々の支払額(返済額)が固定される仕組みです。
つまり、水面下で金利が上がり、利息負担が膨らんでいるにもかかわらず、
表面上の返済額が変わっていないだけで、実質的な負担は増え続けています。
契約時に1.7%だった金利が、今は3.0%まで上がっている
——読者様の投資用ローンでも、今この瞬間、見えない収支の悪化が水面下で
進んでいる可能性があります。
この記事では、5年ごとに行われるローン支払額の次の見直しタイミングに向けて、
- 今、所有者様(マンションオーナー様)の投資用ローンの水面下で起きている変化
- 次回の見直しのタイミングで、月々の支払額はいくら増えるのか
- 返済額が上る前に、今から準備できる2つの対策
を、具体的なシミュレーション数字とともに解説します。

まず現在地を確認する|「3つの数字」で現状を読み解く
「自分の投資用ローンは大丈夫か」ーーそう感じたとき、まず手元に金融機関から届いた「返済予定表」または「金利変更通知」をご用意ください。
現在を正確に把握するために、確認したいのは次の3つの数字です。
この3つを書き出してみることで、ご自身のローンで、今何が起きているかが把握しやすくなります。
予定表のどこを見るか
○○銀行 住宅ローン返済予定表
2026年8月分
| 当初借入額 | 25,000,000円 | 借入日 | 2024年8月 |
| 返済期間 | 35年(420回) | 返済方法 | 元利均等 |
| 当初適用金利 | 1.700% | 5年ルール | 適用中 |
現在の適用金利
3.000%
返済スケジュール(一部抜粋)
| 回数 | 返済日 | 返済額
2
|
元本 | 利息 | 残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 22 | 2026/06 | 79,000 | 18,975 | 60,025 | 24,010,891 |
| 23 | 2026/07 | 79,000 | 19,022 | 59,978 | 23,991,869 |
| 24 | 2026/08 | 79,000 | 19,069 | 59,931 | 23,972,800
1
|
| 25 | 2026/09 | 79,000 | 19,116 | 59,884 | 23,953,684 |
※単位:円 当月の返済回目に色を付けています
赤枠で囲んだ3箇所が、確認していただきたい数字です。
① 現在の残債:直近の返済回における「残高」。所有者様が現在背負っている、現在の借入金額です。
② 毎月のローン返済額:「返済額」欄。5年ルールのおかげで、一見すると契約時から変わっていないように見えます。
③ 現在の適用金利:契約時の金利と比べてみてください。ここが上がっているなら、実質的な利息負担は増え始めています。
注意:予定表が「月利」担っている場合
金融機関によっては、金利が「月利(月あたり)」で表記されていることがあります。「0.2500%」などと書かれていると、一見低金利に見えますが、年利と混同してしますと実際の状況を見誤ってしまいます。
よくある3つの表記パターン(同じ意味)
利率(月利)
0.1667%
+
保証料率(月利)
0.0833%
合算利率(月利)
0.2500%(0.1667%+0.0833%)
年利換算(これが本当の金利)
3.000%
「合算利率0.25%だから低い」ではなく、「合算月利0.25% = 年3.0%」と読み直すのがポイント。
「合算利率0.25%だから低い」とそのまま受け取るのではなく、「合算月利0.25% = 年3.0%」と読み直すことが、正確な数字を把握する第一歩です。
この3つの数字を書き出してみる
まずは紙でもスマホのメモでもいいので、この3つの数字をご自身のローンで書き出してみてください。
特に③現在の適用金利が、契約時の数字とどれだけ乖離しているか。ここが次なる負担増を防ぐための出発点になります。
次の見直しで、月々の「持ち出し」はいくら増えるのか
第1章で書き出した「3つの数字」——これがまさに、次に何が起きるかを教えてくれる材料になります。
ここでは、投資マンション所有者に多いパターンをモデルケースにして、3年後の見直しで何が起きるかを数字で追いかけてみます。
モデルケースの設定
借入額 2,500万円
返済期間 35年
契約時の金利 1.7%(2024年頃契約想定)
経過年数 2年
現在の適用金利 3.0%(+1.3%上昇)
5年ルール 適用中(月々のローン返済額は契約時のまま固定)
契約時の月々返済額は約79,000円/月。今も口座からはその金額が引き落とされている状態です。
しかし、見えないところで元金と金利の返済内訳はすでに別物になっています。
今の状態と、3年後の見直しで起きること
今の状態(見えない変化)
契約時1.7% → 実は3.0%
79,000円/月
5年ルールで返済額は固定中
3年後、次の見直しで…
↓
金利変動なし
3.0%のまま
95,700円/月
+16,700
+0.25%
3.25%(上限到達)
98,750円/月
+19,750
+0.5%
3.5%+未払利息
98,750円/月
+水面下で蓄積
現在の月々返済額 79,000円は、契約時と同じ金額です。しかし、水面下では既に適用金利が3.0%まで上がっています。5年ルールが働いているうちは、この「見えない変化」の状態が続きます。
3年後の見直しでは、この水面下の変化が実際の返済額として顕在化します。
▸ 金利が今のまま(3.0%)で見直し
月々の返済額は約 95,700円(+16,700円/月)
▸ さらに +0.25% 上がる場合
月々 98,750円(+19,750円/月)——ここで125%ルールの上限に到達
▸ さらに +0.5% 上がる場合
月々は同じ 98,750円で頭打ち。ただし、水面下で未払利息が積み上がっていきます
「月々98,750円で止まる」だけを見ると、125%ルールが負担増から守ってくれているように見えます。しかし実際は、金利が上がれば上がるほど、水面下で見えない負担が増えていく構造になっています。
契約時から3年後までの全体推移
契約時から3年後までの全5段階を並べると、このようになります。
79,000
基準
契約時
1.7%
79,000
±0
現在
実は3.0%
95,700
+16,700
3年後
変動なし
98,750
+19,750
3年後
+0.25%
98,750
+19,750+α
3年後
+0.5%
単位:円/月 ※⑤の+αは水面下で蓄積される未払利息
契約時と現在は、同じ79,000円/月。しかし、その中身は既に大きく変わっています。そして3年後、水面下で起きていたことが返済額として顕在化する——これが「確実にやってくる現実」です。
なぜ「気づかないうちに」負担が積み上がるのか
第2章で見た「確実にやってくる現実」——なぜ、月々の返済額は変わっていないのに、3年後に一気に跳ね上がるのでしょうか。その裏側には、変動金利ローン特有の2つのルールが働いています。
どちらも「急激な負担増から借り手を守る」ためのルールですが、実は負担を「なくす」ものではなく、「先送りしている」に過ぎません。ここで、その仕組みを3つのステップで整理していきます。
5年ルール ― 金利が上がっても、返済額は5年据え置き
変動金利ローンは、通常半年ごとに金利が見直される仕組みです。ただし、月々の返済額そのものは5年間据え置きのまま変わりません。基準金利が上がっても、その影響がすぐに月々の返済額へ反映されないようになっています。
では、その間に水面下で何が起きているのでしょうか。
実は、同じ月々79,000円を支払っていても、その「内訳」が大きく変わっています。
契約時(金利1.7%)
元本 43,450円+利息 35,550円
月79,000円の内訳
現在(内部金利3.0%)
元本 18,960円+利息 60,040円
月79,000円のまま(内訳が変化)
同じ79,000円を払っていても、元本の減りは43,450円 → 18,960円と半分以下に。残債が予定通り減らない状態が続いています。
契約時は、79,000円のうち43,450円が元本の返済に充てられていました。
ところが現在は、同じ79,000円を支払っていても、元本に回るのはわずか18,960円。残りの60,040円は利息の支払いに消えています。
つまり、月々同じ金額を負担していても、元本の減るペースは半分以下に落ち込んでいます。5年ルールで表面上の金額が維持されている裏側で、「残債が予定通りに減らない」という状態が続いているのです。
125%ルール ― 見直しても、いきなり25%以上は上がらない
5年経過後の見直し時、新しい返済額には「直前の返済額の1.25倍」という上限があります。今回のケースでは79,000円の1.25倍、つまり 98,750円が上限となり、これを超える金額に、いきなり跳ね上がることはありません。
急激な負担増から守ってくれる仕組みのように見えますが、これがステップ3の「見えない負債」を生む構造になっています。
3年後の見直しで、月返済額はこう変わる
本来110,000円必要
上限98,750円との差 =
未払利息 +11,250円/月
95,700円
3.0%
変動なし
98,750円
3.25%
上限に到達
98,750円
3.5%
上限で頭打ち
3年後の見直しにおける3つのシナリオを振り返ってみましょう。
金利が3.0%のままなら95,700円、さらに+0.25%上がると98,750円で上限(当初返済額79,500×1.25倍)にちょうど到達し、+0.5%上がっても月々の返済額は98,750円で頭打ちになります。
上限によって表面上の支払額は抑えられていますが、上限を超えた分の利息が消えてなくなるわけではありません。この差額である月々11,250円が、水面下で未払い利息として隠れていくことになります。
未払利息 ― 上限で守られる代わりに、水面下で借金が積み上がる
ステップ2で生じた「隠れた月々11,250円」——これが「未払利息」と呼ばれるものです。本来払うべきだった利息が、毎月、水面下で積み上がっていきます。
見えている返済額
━━━ 水面(見えている部分)━━━
水面下で毎月積み上がる未払利息
未払利息
+11,250円/月
5年間で累積すると
11,250円 × 12ヶ月 × 5年 = 675,000円
↓ 次の見直し(61回目・5年毎)で
累積した675,000円が残債に組み込まれ、ローンの残存期間を通して月々返済額に上乗せされます。見えないところで借金が増え、次の見直しで顕在化するのがこの仕組みです。
残債に組み込まれた675,000円は、ローンの残存期間を通して月々の返済額に上乗せされる形で回収されていきます。見えないところで借金が増え、次の見直しでさらなる返済額の増加として顕在化する——これが、変動金利ローンの2つのルールが生み出す構造です。
125%ルールは「守ってくれるルール」ではなく、負担を「先送りするルール」に過ぎません。
5年ルールと125%ルールの2段構えによって、金利上昇の実態は最後まで見えにくくなっているのです。

3年後の見直しまでにできる、2つの選択
ここまでで、ご自身の現在地と、水面下で何が起きているかが数字で見えてきました。次に考えるべきは、「これからどう動くか」という具体的な選択です。
先送りされた負担が3年後の見直しで顕在化する前に、今から打てる対策は大きく分けて2つあります。「保有し続ける方向」と「手放す方向」——どちらの選択肢をご自身の状況に当てはめるか、まずは対比で整理してみましょう。
① 繰上返済 ― 元本を減らして未払利息のリスクを回避する
保有し続ける方向を選ぶなら、まず検討したいのが繰上返済です。元本そのものを減らすことで、将来の返済額の上がり幅を抑え、125%ルールの上限に達する可能性を下げる効果があります。
前の章で見た通り、金利上昇の影響は「元本 × 金利」の掛け算で効いてきます。元本を早めに減らしておけば、同じ金利上昇でも見直し時の跳ね上がり幅が小さくなります。つまり、未払利息が発生するライン自体を遠ざけることができるのです。
なお、繰上返済には以下の2つのタイプがあります。
期間短縮型
月々の返済額はそのまま、返済期間を短くする。総返済額を大きく削減できます。
返済額軽減型
返済期間はそのまま、月々の返済額を軽くする。手元のキャッシュフローを楽にできます。
どちらのタイプが向いているかは、現在のキャッシュフローと今後のライフプランによって変わります。詳しくは別記事にまとめていますので、あわせて参考にしてください。

② 売却試算 ― 保有コストと売却損を並べて比較する
もう一つの選択肢は、「今、手放す」ことを検討することです。もし現在の売却相場が残債を下回るオーバーローン状態であれば、売却時に差額を自己資金で補填する必要があります。「損切り」という言葉に抵抗感を持たれるのは当然のことです。
しかし、冷静な判断は「今売却して確定する損失」と「このまま保有し続けた場合のコスト」を並べて比較するところから始まります。
- 今売った場合の手出し額(実損)
残債 − 売却価格 − 諸費用 = 手元から出す差額 - あと5年・10年保有した場合の累積持ち出し
(月々の持ち出し額 × 保有月数)+ 次回見直しでの返済額上乗せ分 + 未払利息の累積
この2つを並べてみると、「損切りしてでも今手放したほうが、最終的な負担は軽く済む」というボーダーラインが数字として見えてきます。金利上昇局面では、(月々の持ち出し額 × 保有月数)+ 次回見直しでの返済額上乗せ分 + 未払利息の累積
ただし、実際の売却試算には、物件ごとの正確な残債、最新の売却相場、諸費用、そして税金(減価償却費累計等の考慮)など、細かな前提条件が絡んできます。まずは「ご自身の物件の場合、実際の数字はどうなるのか」を試算してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
「自分の場合はどうなる?」と思われたら、まずは現状の整理から
無料相談で状況を整理する
2つの選択に共通するもの
どちらの方向を選ぶにしても、共通して大切なのは「まずは数字で自分の現在地を確認してから動く」という順番です。感覚や気分だけで判断してしまうと、後になって後悔の種を残すことになりかねません。
3年後の見直しは、確実にやってくる現実です。今のうちに見えない変化を数字として把握できていれば、慌てることなく、ご自身にとって最適な対策を「選ぶ側」に回ることができます。
「確実にやってくる現実」に備える
最後に、ここまでの内容を簡単に振り返ります。
- 第1章
返済予定表の「3つの数字」から、ご自身のローンで今起きていることを確認しました。 - 第2章
3年後の見直しで月々の返済額がどう変わるのか、モデルケースの数字で追いかけました。 - 第3章
5年ルール・125%ルール・未払利息の仕組みから、「水面下で何が起きているのか」を紐解きました。 - 第4章
見直しまでに今できる2つの選択——「繰上返済」と「売却試算」——を対比して整理しました。
「知っている状態」から動くこと
3年後の見直しは、決して遠い未来の話ではありません。契約した時点で、ルールとしてすでに決まっていた現実です。
しかし、同じ現実を迎えるにしても、その捉え方は大きく変わります。
▸ 見ていない人にとっては——ある日突然、いきなり降ってくる負担
▸ 数字で見えている人にとっては——事前に手を打つための、有効な判断材料
この違いは、3年後、5年後、そして10年後の家計と資産形成に、とても大きな差として現れてきます。今こうしてご自身の数字と向き合おうとしている時点で、所有者様は既に「選ぶ側」へと大きく近づいているはずです。
一人で判断が難しいと感じたら
繰上返済がいいのか、
売却を視野に入れるべきか、
あるいは今しばらく保有し続けるのか。
その判断のベースになるのは、いつの時も「数字」です。
ただ、物件ごとに残債・売却相場・キャッシュフロー・税金などの条件は異なるため、いきなりご自身だけで最適な答えを出すのは難しいかもしれません。
「自分の場合、まずは何から考えればいいのか」と迷われている方に向けて、無料相談の窓口をご用意しています。
無料相談で見えてくること
- 現在の状況や、漠然とした不安のヒアリング
- お手元の「返済予定表」を使った現状の確認
- 今後の方向性(保有し続けるか、手放すか)の整理
30〜60分程度のご相談で、まずは頭の中を整理し、現状を把握するところからスタートします。
「今、自分はどういう状況にあるのか」という客観的な現在地が、その場でクリアになるはずです。
3年後の見直しは、確実にやってくる現実です。
今のうちに見えない変化を把握できていれば、慌てることなく、ご自身にとって最適な対策を「選ぶ側」になれます。

