
「サブリース契約のまま、売れるのだろうか。」
そう思いながら、なかなか動き出せずにいる所有者様は多いと思います。
調べれば調べるほど、
- 「解約しないと売れない」
- 「解約には正当事由が必要」
という情報ばかりが出てきて、出口が見えなくなってくる。
そして、勇気を出してサブリース会社に解約を申し出たら、こう言われた所有者様もいます。
「借地借家法上、応じる義務はありません。」
「空室リスクがなくて安心」と言われて契約したものの
物件所有者様に不利なサブリース契約の条文例
- サブリース契約期間中であっても、退去時の原状回復費用は所有者負担
- 入居者の募集費用は所有者負担
- サブリース契約中の設備等のメンテナンス費用は所有者負担
- 2〜3年ごとに1ヶ月分の賃料が支払われない
サブリース契約の解約の難しさ——
契約時に書類で説明はあっても、その意味を十分に理解できていた所有者様は多くないのが実情です。
「自分が甘かった」
「もっと調べるべきだった」
と自分を責めている所有者様も多いかと思います。
ただ、多くの所有者様とお話せていただく中で、
理解できるまで伝えられていなかったケースが、実務上は非常に多いと感じています。
一つだけ、先にお伝えしておきたいことがあります。
売却を考え始めても、サブリース会社への連絡は控えてください。
サブリース会社と販売会社はグループ関係にあることが多く、所有者様側の売却の動きを察知すると、
- 新しい買い手への契約承継を難しくしたり
- 保証賃料の減額交渉
を仕掛けてきたりするケースがあります。
動き方の順番を間違えると、せっかくの売却機会を自ら狭めてしまうことになります。
出口はあります。ただし、順番と動き方が全てです。
私は1級FP技能士・CFP®・宅地建物取引士として、不動産会社を経営しながらFP業務を行っています。
売却ありきではない完全に中立な立場で、実務のリアルな目線から解説します。

サブリース契約のまま売却できるか?
「当初、営業マンから聞いていた月々の金額と、実際の額が違う。」
そう気づいたとき、多くの所有者様はまず営業マンに連絡します。
うまくかわされる。
次にインターネットで調べる。
難しい法律の話ばかり出てきて、余計に不安になる。
ファイナンシャルプランナー(FP)に相談したら、保険を勧められて終わった——
そんな経験をされた方も少なくないと思います。
このまま持ち続けていいのだろうか。
売ることはできるのだろうか。
売却したらいくらくらいになるのだろうか。
誰に聞けばいいかもわからないまま、毎月の口座引き落としだけが続いている——
そのような状態でご相談にいらっしゃる所有者様は、多くいらっしゃいます。
そういった所有者様から、最初に必ずといっていいほど聞かれる言葉があります。
「仮にサブリース契約がついたままでも、売れますか?」
結論:サブリース契約がついたまま売却は可能です。
サブリース契約が付いたまま売却する方法があります。

地位承継(ちいしょうけい)
現在のサブリース契約を、そのまま新しい買い手に引き継ぐ手続きです。
所有者が変わっても、サブリース会社との契約関係は継続されます。
つまり、解約しなくても売ることはできるのです。
※金融機関やサブリース会社によっては不可となる場合もあります
ただし、現実は厳しいです
売却価格は相場より大幅に下がる傾向があります。
「売れる」ことと「高く売れる」ことは全く別の話なのです。

「解除してから売りたい」の理想と現実
違和感が積み重なった先に、多くの所有者様が考えることがあります。
できれば売却したい
ただ、売却について調べていくうちに、初めて気づく所有者様が多いのが実情です。
サブリース契約が付いたままでは売却が難しくなること。
そして、解除しようとしても簡単にはいかないことを。
自分の資産形成のために最善を尽くしてくれると思っていた。
でも、いざ問題が起きて営業マンに連絡すると
話をはぐらかされる
あるいは、すでに退職していていない
会社に連絡しても、明確な答えは返ってこない。
「あぁ、自分のことは考えてくれていなかったんだ。」
その事実に気づいたとき、多くの所有者様は呆然とします。
そして、相談先を探し始めた所有者様が、次に考えることがあります。
サブリースを解除してから売れば、高く売れるんじゃないか。
これは正しいです。
サブリースなしの状態であれば、実際の入居者家賃をベースに利回り計算ができるため、買い手にとって魅力的な物件になります。
サブリース解除してから売る、それが理想の出口です。
ただ、「サブリース解除」が非常に難しい。
サブリース契約には借地借家法が適用
されるため、
オーナー側からの解約は「正当事由」が必要です。
「売却したい」という理由だけでは、
正当事由として認められるケースはほとんどありません。
プロの視点
近年、国もサブリース契約のリスクを重く見るようになり、
契約前の重要事項説明が法律で義務付けられるようになりました。
しかし、現時点ではサブリース業者の勧誘や広告の適正化が主な目的であり、
所有者様の損失につながる行為や解約を阻む行為への直接的な規制には至っていません。

サブリース付き売却が「安くなる・売れにくい」3つの理由
売れることはわかった。
でも、どのくらい安くなるのか。
それは所有物件・サブリース会社・ローン残債によって変わります。
ただ、価格が下がる理由は共通しています。
まずその構造を確認していきましょう。
3つに共通しているのは、「情報が見えないことが価格を下げる」という構造です。
次のセクションでは、その情報をどう整理するかを解説します。

サブリース付き投資マンション、売却前にやるべき3つのステップ
「情報が見えない」という構造は、実は変えられます。ただし、動く順番が全てです。
まず「売るべきか」を数字で整理する
売却に動き出す前に、一度立ち止まってください。手元にあれば、以下の書類を確認します。
- 購入時の売買契約書・重要事項説明書
- 契約書類に保管されている長期修繕計画・管理組合から送られてくる議事録
- ローン返済表
- 賃(転)貸借契約書(サブリース契約書)
- 不動産収支内訳書(確定申告書)
まず、所有した場合の収支を確認することで、今、売却した場合と持ち続けた場合の損益を数字で比較できます。また、売却時の譲渡所得税も含めた「本当の手取り」を把握してから動き出すことが、後悔のない判断につながります。
契約書を確認する
サブリースの契約条件・解約条件・違約金・契約期間・自動更新の有無を把握します。
保有を続けるか、売却に動くかを判断するための重要な材料になります。
サブリース付き売却の実績がある仲介会社を選ぶ
一般の仲介会社に依頼すると、サブリース会社への連絡タイミングを誤って売却が頓挫するケースがあります。地位承継の実務経験がある会社を選ぶことが、売却成功の最大のポイントです。
⚠ よくある失敗
所有者様がサブリース会社に「売却を考えている」と伝えてしまうと、
警戒した会社が地位承継を拒否したり、保証賃料の減額交渉を先手で仕掛けてくることがあります。
【プロの視点】
「解約できない=売却できない」ではありません。
ただし、動き方を間違えると本当に売れなくなります。
まずは書類を整理して、専門家と一緒に数字で判断する。
それだけで、選択肢が大きく広がります。

サブリース付き投資用マンションの売却の流れ
ステップ1で契約内容を一つ一つ確認し、数字で比較した結果、「売却する」という判断に至った所有者様へ。
ここからは、実際に売却を進める際の流れをお伝えします。
サブリース付き投資用不動産の売却は、通常の売却と異なるステップが必要です。
動き方の順番を間違えないことが、成功の鍵になります。
サブリース付き売却の実績がある不動産会社に査定を依頼する
サブリース付き物件の売却価格は、主に以下の4つの要素によって変わります。詳細は不動産会社と一緒に確認していくものですが、こういった要素が絡んでいることを頭に入れておくだけで、相談がスムーズになります。
- サブリース会社の知名度・信用度
過去にトラブルを起こしたサブリース会社が絡む物件は、金融機関が融資を拒否するケースがあり、売却自体が難しくなります。どのサブリース会社かによって、売却の可否が変わります。 - 築年数・立地
金融機関の融資基準と買い手の判断に直接影響します。築年数が古い、または駅から遠い物件は、融資が通りにくく買い手が限られます。 - ローン残債
売却価格とローン残債の差額が、実質的な損益になります。損失が出る場合は差額の補填が必要になり、利益が出る場合は譲渡所得税と残債の減り具合を確認しながら、最適な売却タイミングを探っていく作業になります。 - 保証賃料の水準
サブリース付きのまま売却する場合、保証賃料の水準が査定額に影響します。物件によって状況が異なるため、不動産会社と一緒に整理していくのがスムーズです。
買い手の探索
サブリース契約付投資用マンションの買い手は、一般の投資家ではなく、サブリース物件に理解のある投資家に限られます。サブリース付き売却の実績がある不動産会社であれば、そういった買い手へのルートを持っています。会社選びがそのまま買い手探しの成否につながります。
地位承継の手続き
売買契約と同時に、サブリース契約の地位承継手続きを進めます。売主・買主・サブリース会社の三者が関わる複雑な手続きになります。所有者様は担当者から調整状況を確認しながら、手続きが整った段階で書類にサインする形が一般的です。サブリース会社との直接のやり取りは、不動産会社に任せるのが鉄則です。

実際どうすべきか?FP×宅建士の判断基準
「売るべきか、持ち続けるべきか」
この問いに対して、不動産会社は売却ありきで答えます。
一般のFPは不動産の実務を知らないまま答えます。
どちらに相談しても、本当の意味での「中立な判断」は得られません。
本当に考えるべき比較
「今のうちに売却損を受け入れて手放すか」
VS
「持ち続けて、上昇している金利・修繕積立金に加え、将来の設備メンテナンス費用、契約内容によっては不利な条件を抱え続けるか」
この比較を、感覚ではなく数字でシビアに見ることが重要です。
購入時期・ローン残債・将来の収支・譲渡所得税——
これらを一つ一つ整理することで、初めて「自分にとっての正解」が見えてきます。
この整理は、不動産の実務とFPの両方の視点がなければできません。
「売却ありきではない立場で、数字を使って一緒に考える」——
それが、私たちにしかできないことだと思っています。

まとめ
サブリース契約付き投資用マンション物件の売却で最も避けるべきは、一人で抱え込んで動けなくなることです。
「売れるのかどうか」「いくらになるのか」「このまま持ち続けていいのか」——
答えが見えないまま、毎月の口座引き落としだけが続いていく。その時間が、一番もったいない。
でも、その時間は無駄ではありません。悩んできた分だけ、一緒に考えられることがあります。
手元に用意してほしい8つの資料
- 購入時の売買契約書
- 購入時の重要事項説明書
- 購入時の長期修繕計画
- 賃(転)貸借契約書(サブリース契約書)
- ローン返済表
- 管理組合から届いた書類(議事録等)
- 不動産収支内訳書(確定申告書)
これだけ揃えていただければ、「売るべきか持ち続けるべきか」を数字で整理するところから始められます。
FAQ
- サブリース解約を断られたまま売却できますか?
-
売却はできます。「地位承継」という手続きで、サブリース契約ごと買い手に引き継ぐ方法があります。ただし「売れる」と「高く売れる」は別の話で、売却価格は相場より下がる傾向があります。
- サブリース契約付きだと売却価格はどれくらい下がりますか?
-
物件・サブリース会社・ローン残債によって異なるため、一概には言えません。ただし1〜2割程度下がるケースが多いのが実情です。どのサブリース会社が絡んでいるかによって、売却の可否自体が変わることもあります。
- 違約金を払えばサブリースは解約できますか?
-
違約金を払えば必ず解約できるわけではありません。サブリース契約には借地借家法が適用されるため、オーナー側からの解約には「正当事由」が必要です。「売却したいから」という理由だけでは、正当事由として認められないケースがほとんどです。
- 誰に相談すればいいですか?
-
不動産会社に聞けば売却ありきになり、一般のFPは不動産の実務に詳しくない。「どこに相談すればいいかわからない」という状態が、一番つらいところだと思います。宅建士とFPの両方の視点を持つ専門家であれば、売るべきか持ち続けるべきかを、数字でフラットに一緒に整理できます。まだ答えが出ていない段階からでも、話せる場所があります。

