ゼロ金利が終わり、金利のある世界が戻ってきた。
住宅ローンや投資用不動産のローンを組んでいる人は、返済表を見るたびに金利部分がじわっと増えているのを見て、少し青ざめることもあるだろう。
今日は、金利と時代に振り回された、
ひとりの投資マンションオーナー(Aさん)の話を
残しておきたい。
物語は2002年に始まり、2024年に終わる。
はじまり(2002年)――新築・23区内・駅近、手堅い出発
2002年、Aさんの職場に営業電話がかかってくる。
これをきっかけに投資用ワンルームマンションを購入。
- 新築
- 23区内
- 駅チカ
売却益よりも安定した家賃収入を目的とした
購入だった。
ローンの支払いは家賃でほぼカバーでき、固都税を足しても年間収支はわずかなマイナス。
2002年当時は30年ローンが主流で、
定年前の完済を前提に計画していた。
投資先の選択肢が少なかった時代。悪い選択ではなかったはず。

順調な追加購入(2004年頃)―2件目までは想定内
2年後、年収が上がり、同じ会社から追加購入の提案。
2件目も都内・駅チカで収支は同様。
この2件で終わっていれば、
Aさんの人生は、たぶん何も問題なかった。
- 早めに繰上げ返済を行う
⇒家賃収入を生活費に回す - 10~15年超えたあたり
⇒ローン残債を売却価格が上回れば現金化することもできた
不動産を活用して得た収益を他の投資にまわすこともできたと思う。
暗雲(2008年)――3件目で歯車が狂う
また職場に電話がかかってくる。
今度は別の会社。
6年間、問題なくやれてきたからだろうか、
Aさんは3件目もあっさり了承した。
たぶん、営業マンの営業成績を
助けるつもりだったんだと思う。
その気持ちはわからなくもない。
けれど、ここから歯車が狂い始めた。

3件目も東京23区内ではあるけれど、
駅からは少し距離がある。
- 駅からは少し距離(13分超)
- ファミリータイプ
- 家賃は高いけど、当然支払いも高い。
そして、Aさんの金融機関審査の属性は悪くない
のに、なぜか、いわゆるサブプライムローンでの契約。
2008年当時はプチバブルの空気間
- 5年間の支払額固定特約はない
- 金利は独自レートの青天井
(当時のTIBOR+変動スプレッド連動) - 固都税込みで月4万円以上の持ち出しになっていた。
このタイミングで、
私は他の顧客からAさんを紹介された。
「ちょっと後輩の様子がおかしいから、
一度話を聞いてやってほしい」と。
Aさんに聞いてみると、契約直前まで、
以前と変わらないような条件の物件だったらしい。
でも、契約日当日に急に条件が変わった。
だけれど、営業マンを信じて契約してしまった。
数字を見た限り、契約すべきではなかった。
私は契約破棄を強くすすめた。
でも、Aさんの意思は固く、そのまま所有を開始した。
この時点で為す術なく、私は一度身を引いた。

破綻の兆し(2010年前後)――自転車操業へ
2年後、「助けてほしい」と
Aさんから連絡がくる。
最初の2件の家賃が滞っている。
3件目も独自レートの金利が上がり、
月々の持ち出しが上がっていて、
給料がほとんどローンで消える、と。
詳しく聞いていくと、
3件目の契約時に初期費用や頭金を、
別に「諸費用ローン(金利7%超/10年ローン)」で組んでいた。
その返済がまた短期で高額。
そりゃ回らない。
しかも、すでに返済のために消費者金融にも手を出していた。
家賃で生活費をまかない、給料が入ると遅延分の支払いと諸費用ローン、消費者金融の返済へ――完全な自転車操業。

サブリース解除と自主管理へ(2010年代前半)
3件ともサブリース契約だったが、
1・2件目の業者は「1ヶ月入金→1ヶ月未入金」を繰り返し、遅延を目立たなくしていた形跡。
最初の遅延から半年超が経過し、2ヶ月の遅延状態だったため、契約解除事由に該当と判断して即対応。
- サブリース会社に契約解除の書面送付
- 入居者に直接連絡し、家賃の振込先をAさん口座へ変更
- 敷金はAさんが立替
この時代は保証会社もなかったので、流れはシンプルだった。

ようやく家賃が直接入るようになり、収支が少し改善。
ただ、3件目の金融機関は
リーマンショック後に投資用融資から撤退しており、債権が別の金融機関に譲渡され、
さらに金利が上がっていた。
収支表をつくり直し、生活費も見直して、
遅延を出さずに回るように組み直した。
ちなみに、1件目・2件目のサブリース会社は後に倒産。
販売元も倒産しており、同じような被害に遭った人も少なくないと思う。
その後、なんとか生活が回るようになったけれど、月々の持ち出しは3件で約7万円(固都税は別)。
自主管理に切り替えた2件の空室に備えて、月5万円の貯金もお願いした。
自主管理にしたおかげで、売却の検討もできるようになった。
2件目に価格がつき、運良く売却。
売却益もある程度確保できて、売却益を1件目の繰上返済を実行。
1件目はそのまま保有。
3件目は借り換え先を探したけれど、最終的に担保評価が出ず高金利所有が続く。
時間が流れてアベノミクスが始まり、投資用ローンに再び積極的な金融機関が出てきた
かなり強引な手段ではあるかと思うが、
好条件の金融機関で新規で2件購入。
取引実績の信用を元に、同じ金融機関で3件目の借り換えについに成功。
この出来事はかなり大きかった。
借換金額3,500万円超で
金利5%→1.6%へ大幅低下。
ようやく
月々の持ち出しはゼロ近くに
なった。
この時点で4件の所有。
3件目(ファミリー物件)はサブリース契約を継続。
毎年2月にエアコン故障で家賃不払いという不可思議な事態が続き、解約交渉を行うも「借地借家法」を盾に難航。
出口戦略(コロナ明け2024年)―売りやすい市況を逃さない
潜伏すること約5年。
コロナ禍が明けてから、
中古投資用マンション市場が活発化。
サブリース付物件も売却しやすくなった
待ちに待ったタイミングの到来。
このタイミングを逃すわけにはいかなかった。
まずは、追加で購入していた2件をプラスで売却。
3件目もようやく評価がつき、売却可能に。
ただ、金利の高いサブプライムローン金利期間が
長かったため、残債の減りが悪く、
持ち出しでの売却となった。
それでもやっとあの物件を手放せるということで
Aさんも私もこの上なくほっとした。
毎年エアコンが壊れるサブリース会社が
すんなり売却させてくれるわけはない
最後の最後で、解約に応じないサブリース会社から「家賃を1万円下げる」と言われる。
Aさんも、もうこの会社とは関わりを持ちたくないとのことで、(賃貸市況全体が上がっているが)その減額家賃を認め、再査定の後、売却価格を下げての売却となった。

今、残ったもの――1件の収益物件とコントロール
結果的に、1件目だけは残すことに。
この1件はローン残債ももう数百万円程度で、
月々の収支も既にプラス。
あと数年で家賃収入だけになる。
自主管理で契約を完全にコントロールできているという点も安心が大きい。
気がつけば、Aさんの最初の購入から22年が経っていた。
教訓として2点残しておきたいこと
Aさんを無知だとか、愚かだとか、
言うことは簡単だ。
ただ、不動産というものは、性質上、
そう何度も売買することを経験することはないため、誰しも無知で愚かになる可能性が高い商品であると思う。
不動産投資は「買った時点で9割」決まる。
物件・価格・ローン条件・想定家賃…
「ん?」と引っかかることが一つでもあれば、
手付金を捨ててでも引き返す勇気が必要だ。
住宅ローンは30年以上(今なら40年以上のローンも多くなってきた)という付き合いの代物だから。
不動産は思っている以上に景気や金融政策に左右される
金利はすぐ上がり、
不況になれば金融機関はあっという間に貸し渋る。
シャッターが閉じた時期には
不動産マーケットに資金が流れ込まないため
物件は驚くほど動かない。
できることがほとんどなくなる。
焦らずに、次のシャッターは開くタイミングを待つこと、これしかない。
シャッター「開いたとき」には、
いい意味でも悪い意味でも、
お金の流れも一気に変わる。
そのときを逃さず、適切な対応をしていくことが
何より大事なんだと思う。

チャンスは用意した人の目の前にしか来ない
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