2024年は日本銀行(日銀)の金利政策転換により、
金利が上昇するのでは、と言われています。
預金者としては嬉しい話ですが、
住宅ローンを抱える家庭にとってはなんとも耳の痛い話です。
この記事では、金利上昇が住宅ローンにもたらす影響と、対処法についてまとめていきます。
みずほリサーチ&テクノロジーズ は、
2023年11月21日発表のリポート『「金利のある世界」への日本経済の適応力』で
2026年にかけて
- 政策金利(短期金利)は2.75%
- 10年国債利回り(長期プライムレート)は3.5%
に上昇すると予測しています。
金利上昇がもたらす影響
金利が上昇すると、直接的な影響を受けるのは住宅ローンの支払いです。
変動金利型の住宅ローンを利用している家庭は、月々の返済額が増加します。
この増加は、家計において他の支出を圧迫し、
生活スタイルの変更を余儀なくされるかもしれません。
5年ルール 125%ルールとは?
5,000万円の自宅を35年ローン・金利0.5%で購入した場合
6年目で金利1%に上昇:約9,700円の支払い増加
6年目で金利1.5%に上昇:約20,000円の支払い増加
1億円の自宅を35年ローン・金利0.5%で購入した場合
6年目で金利1%に上昇:約19,500円の支払い増加
6年目で金利1.5%に上昇:約39,800円の支払い増
0.5%の上昇であれば、何とか対応していけるかもしれませんが、
金利が1%上昇すると、家計の見直しの必要が迫られるかと思います。
変動金利の場合
- 金利の変動があっても当初5年間の支払額は一定
- 次の6年目:支払回数61回目 からの月々返済額は
当初5年間の支払額の125%までしか上げることができない
というルールを定めている金融機関が多いです。
当初5年間の支払額が10万円の場合
➡どんなに金利が上昇した場合でも支払額は12.5万円となります。
(この現象は当初借入金利:0.5%➡61回目時点で変動金利2.2%以上になった場合に発生します。)
支払額だけが固定されますので、
当初借入時点よりも金利のが高い状態が継続すると、
想定よりも借入残高の減りが遅くなり、
61回目、121回目、181回目等の5年毎に
返済額を増やすことで対応を行います。
家計の急変を避けるための救済的な措置になります。
住宅ローン契約内容の確認
まずは、現在の住宅ローンがどの金利タイプに該当するか確認しましょう。
様々ある金利のタイプ
- 「変動」
- 「固定期間選択型(例: 2年固定、5年固定など)
- 「フル固定」
- 「変動」と「固定期間選択型」のミックス型等
変動型や固定期間選択型のローンを利用している場合は、
5年ルール 125%ルールが適用される契約になっているかを確認しましょう。
つぎに、住宅ローンの基準となる金利について確認をしましょう。
変動金利の場合の基準金利は、
一般的には短期プライムレートです。
ただし、金融機関により
- 長期プライムレート
- 東京ターム物リスク・フリー・レート【TORF(旧LIBOR)】
- 金融機関独自の金利(独自レード)
を採用している場合もあります。
過去の基準金利の変動を確認し、将来の金利上昇を予測しておくことも大切
過去の基準金利を確認しておくことで、
金利変動による影響を事前に把握し、適切に対処する準備ができます。
契約内容の確認をした後は、具体的な対処策を考えていきましょう。
短期プライムレート推移
多くのメガバンク、都市銀行、地方銀行では、変動金利の基準として短期プライムレートがよく使われます。
実際の変動金利は、この短期プライムレートから銀行が提供する金利割引(優遇金利)を引いたものになります。
https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/prime/prime.htm
長期プライムレート推移
フラット35や生命保険会社系では、金利の基準として長期プライムレートがよく使われます。
フラット35の金利は、融資実行時の長期プライムレートにより決定されます。
長期プライムレートがどのように変化してきたかを示す表を下記にまとめています。
東京ターム物リスク・フリー・レート(TORF)
都市銀行や地方銀行の一部で、固定金利や変動金利の基準金利として使われます
https://moneyworld.jp/page/torf.html
家計の見直し
金利が上昇した場合、
月々の返済額が増えますので、
返済額の増額分を捻出する必要があります。
返済額の増額分に対応するには、まず家計の見直しが必要
返済額が増加した当初は、できるだけ
貯蓄やNISA、iDeCoなどの月々貯蓄額(積立分)に手をつけないことが
理想です。
まずは固定費の見直しを行いましょう
見直しやすい固定費の例
- ご加入の生命保険や医療保険、自動車保険の見直し(民間の生命保険を会社の団体保険へ切り替え等)
- カーローンの見直し(残代金の清算等)
- サブスクの整理(動画配信サービス、AI関連、ストレージサービス等の重複部分等)
- スマホ関連の見直し(本体割賦払い契約の清算、通信会社の見直し等)
- その他(クレジットカードの見直しやライフライン関係の契約見直し等)
見直せる固定費がなない場合
クレジットカードや銀行の明細を確認し、
浪費と思われる費用をピックアップし、改善できるものを探していきましょう。
習慣になっている支出(飲み物代やよく行くお店など)は、
置き換えることで軽減できるケースが多いです。
置き換えできる例
- 飲み物は外で買わずマイボトルを持ち歩く
- よく行くお店は浪費はないか(お店の変更、回数を少し減らすこと等)で
支出を抑えることはできないか、など。
家計の見直しができないとなれば、収入を増やす
返済負担を軽減する一つの方法になります。
副業を始める、資格給を得るなどです。
できることを考え、行動に移してみるのも対処法になります。
また、これ以上の変動金利に不安を感じられる方は、
住宅ローンの金利タイプを固定金利に変更することで、
将来の金利上昇リスクから身を守ることも一つの検討手段になります。
不動産の売却
金利上昇による負担が大きい場合、不動産を売却するという方法もあります。
なお、不動産を貸し出すという方法もありますが、
基本的に住宅ローン契約中の貸し出しはローン契約の違反です。
ただ、諸事情説明により、相談できる場合もありますので、
必要に迫られた場合は、なるべく早い段階で、金融機関への相談をおすすめします。
ライフプランの見直し
最後に、金利上昇はライフプランにも影響を与えます。
- 家を購入するタイミング
- 子どもの教育資金の計画等
長期的な視点での計画を見直す必要があります。
金利上昇の環境下でのリスク管理を考慮し、
将来にわたって安定した生活を送るための計画を立て直しましょう。
まとめ
日本銀行(日銀)の金融政策の転換が大きくあれば、
金利上昇は避けられない事態になることが想定されています。
ただ、適切な準備と対策を行うことで、
その影響を最小限に抑えることも可能になります。
家計の見直し、不動産の最適な持ち方、そしてライフプランの再設定を通じて、
この変化の時代を賢く乗り越えていきましょう。
なお、綾野1級FP事務所では、お客様の財務状況に合わせた
最適なアドバイスを提供しています。
金利上昇による住宅ローンの支払の変化にご不安を感じられている方は
お気軽にお問い合わせください。